
2008年 8 月のやり取りから約 5 か月後、サトシはアダム・バックに最後のメールを書き送った。Bitcoin v0.1 のリリースの翌日のことである。最初に連絡を取ったサイファーパンクの一人であるバックに、サトシは v0.1 公開を自ら告げた。メールの中核をなすその一文は次の通り。
サトシ・ナカモトのメール(2009年1月10日 18:46 UTC)論文のオープンソース実装、 Bitcoin v0.1 をリリースした。詳細、ダウンロード、スクリーンショットは
www.bitcoin.orgにある。
プロジェクトがどう受け止められているかを示すため、サトシは暗号学メーリングリストの議論からハル・フィニーの応答の一部を転送した。フィニーの発言は metzdowd.com の暗号学メーリングリストアーカイブとして独立に公開されており、正典はフィニーの応答エントリ(2008-11-07)にある。サトシがバックに見せるために特に転送した二行は次の通り。
ハル・フィニーの投稿(2008年11月7日 23:40 UTC)ビットコインはすごく有望なアイデアだと思うんだ。セキュリティを正直な参加者の CPU パワーが攻撃者のそれを上回るという仮定に基づかせるアイデアが気に入っているんだ。
このメールが、サトシとアダム・バックの間で知られている最後の直接的なやり取りである。バックはこの時点でビットコインに関与せず、積極的に参加するようになったのは 2013 年以降で、2014 年に Blockstream 社を設立した。この空白を、バック自身は後に 2024年の回顧で「おそらく私の最大の失敗だった」と振り返っている。2008年 8 月 20 日から 2009年 1 月 10 日にかけての 5 通のメールチェーンは、Hashcash の考案者へのサトシの働きかけ、それを介したウェイ・ダイの b-money の発見、そして稼働するシステムの公開報告までを記録している。



